診療に加え、採用、院内業務、集患、業者対応まで院長先生が判断していると、何から手をつけるべきか分からなくなることがあります。
医療支援の現場では、近隣に新しい病院ができ、患者さまが流れていると感じるという悩みを伺いました。
このようなとき、ホームページ改修や広告をすぐに始めるとは限りません。この記事では、経営上の困りごとを4つに分け、緊急度と患者さま・スタッフへの影響から優先順位を決める方法を整理します。
院長の経営の悩みは、一度に解決しようとしない
経営の悩みが増えると、すべてが急いで解決すべきことに見えます。しかし、実際には、今日対応すべきことと、3か月かけて整えることが混ざっています。
最初に行うのは、解決策を選ぶことではありません。現在起きていることを、判断や推測と分けて書き出します。
たとえば、「患者さまが減った」は現象です。一方、「近隣の新病院が原因だ」は、記録を確認する前の段階では仮説です。
患者数の推移、診療内容、診療日や時間帯、予約や問い合わせの状況など、院内で確認できる事実を先に集めます。解決策は、その後で選びます。
私が大事にしているのも、AIやWebなどの手段を先に決めないことです。まず、誰にどのような影響が出ているのかを確認します。
経営上の困りごとを4つに分ける
この記事では、クリニックの経営上の困りごとを整理するため、「人」「業務」「集患」「資金」の4分野に分けます。これは公的な分類ではなく、最初の整理に使うための枠組みです。
| 分野 | 書き出す内容の例 |
|---|---|
| 人 | 採用、定着、教育、役割分担、特定の人への負担集中 |
| 業務 | 電話、予約、受付、院内の情報共有、更新が止まっている業務 |
| 集患 | 患者数の変化、診療内容の伝わり方、予約導線、ホームページの情報 |
| 資金 | 売上と支出の状況、設備投資、外注費、今後の資金計画 |
一つの悩みが、複数の分野に関わることもあります。電話対応の負担は業務の問題であり、受付スタッフの定着に関わる人の問題でもあります。
分類の目的は、無理に一つへ決めることではありません。関係する人と情報を見落とさないためです。
経済産業省の「ローカルベンチマーク」も、財務情報だけでなく、業務フローや非財務情報から経営状態を把握するツールです。クリニック専用ではありませんが、数字と現場の状況を分けずに見る考え方は参考になります。
優先順位は、緊急度と患者・スタッフへの影響で決める
複数の困りごとが出たら、私は緊急度を確認します。その上で、患者さまとスタッフにどのような影響が出ているかを見ます。
判断しやすくするため、次の項目を1枚の表にします。
- 今日から対応が必要か
- 患者さまの安全や受診に影響するか
- スタッフの負担や業務の継続に影響するか
- 判断に必要な事実を確認できているか
- 院内で対応できるか、専門家の確認が必要か
安全や診療体制に直接関わることは、「すぐに着手できるか」だけで比べません。院長先生や院内の責任者が、関係する法令、ガイドライン、契約、専門家の助言を確認して判断します。
厚生労働省の「いきいき働く医療機関サポートWeb」は、勤務環境改善の進め方を示しています。現状を把握・分析し、問題を抽出して、できることから改善計画を立てる流れです。
この仕組みは各医療機関が自主的に行うものです。スタッフへの影響を見ながら継続的に改善する際の参考になります。
近隣の新病院へ患者さまが流れたと感じたときの整理
医療支援の現場で実際に伺ったのが、近隣にできた新しい病院へ患者さまが流れてしまうという悩みです。
この言葉を「集患が必要」とすぐに結論づけると、答えは広告やホームページ改修に偏ります。先に、次のように分けて確認します。
現在起きていること
- 患者数はいつから、どの程度変わったか
- 初診と再診、診療科、曜日、時間帯で違いがあるか
- 予約、キャンセル、電話問い合わせに変化があるか
- 受診前に必要な情報がホームページで見つかるか
これらは原因を断定するためではなく、まず何が起きているかを共有するための確認です。比較対象とする期間や数値の見方は、院内の記録と経営管理の専門家の助言に沿って決めてください。
患者さまが選ぶための情報
次に、自院の診療内容、診療日、予約方法、アクセス、初診時の持ち物などが、現在の診療体制と一致しているかを見ます。
情報が古い、または予約までの道順が分かりにくい場合は、必要な箇所から直します。デザインをすべて作り直すことが最初の答えとは限りません。
ホームページを見直す際は、クリニックのホームページ制作・改修で確認したい7項目も参考になります。
医療機関のウェブサイトやSNSは医療広告規制の対象になる場合があります。厚生労働省は2026年3月に「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第6版」を公表しています。他の医療機関より優れていると誤解させる表現などを避け、現在確認できる事実に沿って情報を更新します。
最初に取り組むことを一つに絞る
優先順位が決まったら、一つの行動へ落とし込みます。「集患を改善する」では大きすぎます。
例えば、次のような大きさまで小さくします。
- 過去6か月の患者数を曜日別に確認する
- ホームページの診療時間と予約方法を現状と照合する
- 受付で繰り返されている質問を1週間記録する
- 特定のスタッフへ集中している業務を一つ選ぶ
その上で、誰が確認するか、いつまでに行うか、終わった後に何を見て次を決めるかを記録します。
人手不足が緊急の問題であっても、採用だけが対応ではありません。クリニックの人手不足で、採用と並行して整えたい業務導線では、電話、予約、問い合わせ、事務の流れから負担を整理する方法を紹介しています。
小さな作業を選ぶのは、問題を小さく見せるためではありません。動いた結果を確認できる状態をつくり、次の判断材料を増やすためです。
自院だけで判断しない方がよい領域もある
経営上の困りごとは、Webや業務改善だけで完結しません。
資金繰り、税務判断、融資は、税理士、金融機関、認定経営革新等支援機関など、必要な専門性を持つ相談先へ確認します。労務は社会保険労務士や都道府県の医療勤務環境改善支援センター、法務は弁護士など、相談内容に合う専門家を選びます。
医療判断、患者さまへの最終説明、院内の医療安全に関わる判断は、当然ながらWeb制作者やAIに任せる領域ではありません。院長先生と院内の責任者が、必要に応じて医師会や関係機関へ確認します。
RYOZENPROが対応するのは、クリニックのWeb、採用、動画、生成AI、チャットボット、日常業務の整理です。相談内容が支援範囲の外であれば、その線引きを曖昧にしません。
経営の悩みは「誰への影響が大きいか」から整理する
院長先生が複数の経営上の悩みを抱えたときは、次の順で整理します。
- 今起きている事実を書き出す
- 人・業務・集患・資金に分ける
- 緊急度を確認する
- 患者さまとスタッフへの影響を見る
- 最初の行動を一つ決める
この順番なら、専門用語の多いツールや、すべてを一度に変える計画から始めずに済みます。
私は、保険医協会への生成AI伴走支援や、個人病院の支援に関わってきました。その中で大事にしているのは、サービスを売る前に、現場の困りごとと優先順位を確認することです。
何を依頼するか決まっていなくても構いません。現在困っていることと、患者さま・スタッフへの影響を整理したい場合は、mediの無料相談または medi@ryozenpro.com へご相談ください。
お問い合わせフォームには、患者さまを特定できる氏名、生年月日、診療情報などを入力しないようお願いします。

